【Opinion】アリババとテンセントがつくる新しい小売りの形とは?

 ニュー・リテーリング(新小売)

アリババグループ(中国語:阿里巴巴集团)CEOの張勇は、「いつもは静かな月曜の朝が、今日は中国の小売り業界に起きたビッグニュースで騒がしくなった。」と語った。

12月4日月曜日、小売業界のネット掲示板の話題は、一本のニュースで持ちきりだった。

その小売業界を驚愕させたビッグニュースとは、アリババが223億香港ドルをSun Art Retail(中国語:高鑫零售)高鑫(キン)リテールに出資したのだ。

 

この出資によりアリババは事実上中国国内で最大のスーパーマーケットであり、高鑫零售の親会社であるRT-MART(中国語:大润发)(一部機関の統計によると第二位、最大手は華潤としている)の第二位の大株主となった。また、アリババグループは、欧尚リテールや潤泰グループと共に「ニュー・リテーリング戦略提携」を宣言している。

張勇は、「今回の4社の上場企業によるビジネスは、アリババがニュー・リテーリングに進出する大きな一歩だ。この一歩は中国の小売業界を変革するほど大きな一歩でもある。」と語った。

 

大潤発は、スーパーマーケット業界では非常に強大な企業だ。2014年の《中国日報》によると、大潤発は店舗数ではイギリスの大型スーパーのウォルマートやフランスの大型スーパーのカルフールに負けているにも関わらず、売り上げにおいては国内一位を誇り、800億人民元を売り上げている。

 

しかし、このEC時代に大潤発の力が心もとなく見えるのも確かだ。

T-mall(中国語:天猫)やジンドン(中国語:京東)といったB2C(Business to consumerの略。企業が個人消費者を対象にして行う電子商取引のこと)の台頭につづいて、大潤発は「飛牛網」をリリースした。自らの力で、EC時代の風に乗ろうとしたが、上手く風を掴むことは敵わなかった。原因は独立系B2Cの流行や越境EC(海外販売のネットショップ)といった契機を上手く掴めたかったなど、色々考えられる。数年前、EC業界トップが集う秘密のクラブ「雲頂会」で大潤発のトップとECについて丸一日対談した様子は何とも言い難いものがあった。

 

現在、大潤発はアリババと共に歩み始めるところだが、一緒に作り上げるのはECではなく「ニュー・リテーリング」だ。

張勇は、「今日は結婚記念日だ。実は私たちは今回の結婚のことをずっと大事に話し合ってきた。それも結婚する前から、結婚後の事を十分に、具体的に話し合ってきたのだ。」と話している。

 

 

ニュー・リテーリングの考え方

12月4日月曜日、張勇はメディアの前でこのように話した。

「インターネットとビジネスが初めて接触してから今日まで、二つが完全に融合する過程の中で私達はずっと一つの問題について考えてきた。それは決して、どのようにインターネット世界とリアルビジネス世界をそれぞれで活用するか、という問題ではない。私達は逆に考える。如何にインターネットをあらゆるビジネスに浸透させ、デジタル化させるか。そしてデジタル経済の時代が完全に到達する前にそれを完遂しなければならないと考えている。私達が考えるニュー・リテーリングとは、これまでとは全く異なる新しいやり方だ。ビッグデータによる顧客サービスや、ビッグデータによるヒト、モノ、場の再構築こそが私達のニュー・リテーリングへの理解であり、私達が推進しているニュー・リテーリング戦略の核となる考え方でもある。」

 

一方、テンセント(中国語:腾讯)CEOの馬化騰(Ma hua teng)はメッセージでこのように述べている。

「この一年、あらゆる経済社会が全面的にデジタル化している。情報技術はインターネットを象徴する言葉の一つだが、あらゆる業界の全てのプロセスに溶け込んでいる。オンラインとオフラインが一体となり始めている…今はそれぞれの業界が縦方向の融合を見せている。「上から下へ」と「下から上へ」、二本のベクトルが力を発揮している状態だ。多くのインターネット会社はオンラインからオフラインへの流れを特に重視している。逆にオフラインで活躍してきた大量の従来型企業はオンラインへと攻め上がっている。例えば小売り、物流、交通、製造業、農業までがデジタル化の力を借りて次の世代を作り上げようとしている。」

 

「デジタル化」、「融合」、「オンラインとオフラインの一体化」…これらのキーワードは大体同じ意味を指していて、方向性も概ね同じだ。小売りのデジタル化、あるいはニュー・リテーリングの概念において、聆志零は以下のように述べている。

「ニュー・リテーリングをはっきりと捉えるには「一上一下」という概念をよく理解しなければならない。「上」とはつまり資源をクラウドにアップロードすることだ。例えば、プロセス、バリューチェーン、生産力などをクラウドにアップロードする。「下」とは能力をクラウドからダウンロードすることだ。例えば、古いものに新しいものを、小さいものに多きものを、虚像に実態を、個人にプラットフォームをクラウドからダウンロードする。」

 

ニュー・リテーリングは、小売業界において、資源のアップロード、能力のダウンロードの両方を実現した「一上一下」のビジネスモデルといえる。私たちが潜在的なニュー・リテーリングを探す時、「一上一下」のビジネスモデルを兼ね備えているかを観察する。重視しているのは以下の3点だ。

1.技術基盤があり、資源をクラウドにアップロードする能力があること。

2.小売りの経験が豊富であり、経験から得た能力を精錬、分解することが出来ること。能力を定義し、体系化することで初めて、組織が積み上げた能力を店頭までダウンロードすることが出来るからだ。

3.十分な経営管理能力があること。バックグラウンドに存在するクラウド資源とフォアグラウンドである店頭が効果的に連携するには、十分な経営管理能力が必要だといえる。

 

※「一上一下」とは、上げたり、下げたりすること。転じて、その場に応じて適切に処理するたとえ。

 

アリババのニュー・リテーリング

アリババと大潤発の戦略的提携から、「一上」、「一下」の二つの効果が見込まれる。

「一上」はアリババと大潤発のサプライチェーンや作業工程をデータ化すること(資源のアップロード)。

「一下」はビッグデータから、物流ネットワークや顧客データを、大潤発の店頭や店員へ導入すること(能力のダウンロード)。

店頭では顧客のニーズに対して即座に対応出来る上、場合によってはバックグラウンドにある供給資源(商品、物流など)を利用してオンデマンドの対応も可能になる。

 

アリババのニュー・リテーリングの特徴は、大潤発の第二位の大株主という立場から、フォアグランド(店頭)、バックグラウンド(供給資源)の双方をアリババのシステムのコントロール下に強く統制している点である。一方テンセントのニュー・リテーリングの特徴は開放的、プラットフォーム的な点だ。

 

 

テンセントののニュー・リテーリング

テンセントのニュー・リテーリングはECアプリによるものが多い。今年のダブル11(独身の日)には、多くのアリババ系以外のECアプリをまとめて、ECアプリのダブル11を開催していた。

 

また11月16日のアップデートで、wechat(中国語:微信*スマートフォンで、無料通話やチャットができるコミュニケーションアプリ。中国版LINE)は「小店機能」(個人経営のネット通販機能)を追加した。元々別のアプリだったものをwechatのアプリ内に移植し、より使いやすくなった。

11月21日、成都で開催されたwechatの公式講演「小店で毎月一千万稼ぐ方法」では、掽多多(ネット通販アプリの一種)や、人気店舗のケーススタディ、収入の現金化などについて解説した。

wechat公式は全力でネット通販アプリを広めていくつもりだ。聆志零は、このように述べている。

「ネット通販アプリはwechatにとってニュー・リテーリングの要といえる。人を繋ぐ、モノを繋ぐwechatは非常に巨大なクラウドネットワークだ。この生態系の下で人やモノの資源がwechatの機能を通して「一上一下」の「一上」を担うことが出来る。しかし一方で「一下」の部分が明らかに不足している。」

 

Wechatの小店機能では多くの人が店舗を開くことが出来るが、店舗を運営するには当然多くの知識や経験が必要となる。

しかし、小店にはその知識や経験を個人店主に与えてくれる存在(つまり「一下」の仕組み)が欠けているのだ。テンセントはwechatの自由で開放的な生態系の管理者であって、アリババのように直接的にネット通販のノウハウを押し付ける存在になれない。小店がプラットフォームとして機能するには、多くのスタートアップが出現すること、彼らが独自にニュー・リテーリングの機能を定義、構造化し、他の個人店主を導くような存在になることが必要だ。

 

ニュー・リテーリングのため、アリババは巨額を投資して自身が先導者となった。一方でテンセントはツールを開発し、先導者を育成する土壌を作った。では「一上一下」のニュー・リテーリングに第三の道はあるのだろうか。

 

 

 

 

この記事はチャイナテックメディアが以下の参考資料をもとに翻訳・修正・加筆をしたものです。

阿里腾讯在新零售领域已分工明确?

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